作品が完成した時の達成感に魅了されて 〜平坂裕子さん〜
アトリエ Natural Flower 主宰 平坂裕子さん
友人からは「まぐろ」と笑われるくらい動き続けている。テニスに汗を流し、ジムで筋トレをし、ドラムをたたき、家事もこなしつつ、暮らしの大半をお花の時間にあてている。華奢な外見からは想像もつかないバイタリティでお花に取り組む平坂さんに、その思いを聞いてみた。
花との出会い、花の履歴
大学生の時、お花の勉強がしたいと思い立ち、学校帰りに自分で見つけてきた教室に通い始めた。結婚するまで続けたが、当時のお稽古は、先生のお手本通りに真似て生けるだけなのがどこか物足りない気持ちだった。
出産後、すこし余裕ができて、またお花を習いたいと思い始めた頃に出会ったのが草月流。花器を自分で選べたり、自由に生けさせてもらえる楽しさを味わう。子どもが小さい頃は休みながらだったが、気がつけば26年。
押し花も習った。花びらを1枚ずつバラバラにして、乾燥させた花びらを材料に色紙などに貼ってデザインする。フラワーアレンジメントにも興味を持ち、生花やプリザーブドフラワー、アーティフィシャルフラワー(造花)、石けん素材が練り込まれたパフュームフラワーなど様々な花材を扱った。ウェディングフェア&ブーケショーにも参加。とにかくお花が好きで、お花にまつわるいろんなことを勉強した。
夫が体を鍛えるためにと山登りを始めて、木を持ち帰って木の作品を作るようになったのに刺激されて、木やつるを使った作品を作るようになってからは、夫の作品とコラボするようにもなった。今は夫に材料を調達してもらい、つるを巻いてつなぐ、からめるといったアレンジを手がけている。結び目というのは縁起物だし、自由な表現ができるのが気に入っている。
コンテストへの挑戦 そのための日々の努力
「神戸異人館プリザーブドフラワーコンテスト」に、3年続けて出展した。審査で選抜された精鋭だけが選抜デザイナーとして作品を出展できる花にかかわる人には憧れのコンテスト。平坂さんは、2014年は坂の上の異人館、2015年は山手八番館、2016年はベンの家で、それぞれのテーマに合わせた作品を出した。
2014年、坂の上の異人館に展示した作品。
2015年、山手八番館に展示した作品。
ベンの家でのテーマは、フラワーボードの森。平坂さんは作品タイトルを「幻想的な森」として、木の皮やグリーン、苔などを使い、奥深い森の神秘的な美しさを表現した。イメージにたどり着くまで、まさに寝食を忘れて何日もかかった。
だからこそ、作品が出来上がった時の達成感は、媚薬のよう。同時に、見てもらえる喜びも、かけがえのない極上のもの。作品を見た人の想像が膨らみ、動物たちと遭遇しそうな森の異空間に誘い込まれて、自然の生命力を感じてもらえると嬉しい。
こうした大きな作品作りをするには、テーブル花のアレンジだけでは勉強にならないため、平坂さんは、ふだんから飲食店や美容室の店舗で花を生けさせてもらっている。季節や場所、空間に合わせたデザインを磨く練習に励んでいる。
多くの人に お花の楽しさを伝えたい
「お花のデザインを考え、作品を作る楽しさを、多くの人に伝えたい」。そんな思いで、フラワーアレンジメントの教室も始めた。平坂さんのレッスンは、ただ見本通りに仕上げるのでなく自由に作っていいので、生徒の数だけ個性的な作品ができあがる。平坂さん自身もいろんな発見があるので勉強になって楽しいと言う。
ドールの着物アレンジ。花びらを貼り、布やリボンも使って仕上げる。実際の帯の端切れも使う。
上北山村で講習会をしたプリティドールのドレス。
去年、プリティドールという、ワイヤーの人形に花びらとリボンを貼って仕上げていくワークショップをやったところ好評で、奈良県上北山村教育委員会から依頼を受けて講習会が開催された。26人が参加し、個性あふれるプリティドールが完成。作品は地域の文化祭に展示されて好評を得た。
「私も作ってみたい!」と思ってもらえるオリジナルデザインを作りたいと、常々考えている。レッスンは材料を準備する手間がかかり大変なこともあるが、お花の楽しさや作品づくりの喜びをわかちあえる喜びには代えがたく、苦にはならない。
今の目標は、百貨店での展示販売。近鉄百貨店に出展予定も決まり、多くの人に気に入ってもらえるようなデザインを考えようと、日々勉強中だ。「ここ数年のがんばりが、将来につながる」という気持ちで、自分磨きを続けている。お花の楽しさを伝えるデザインをめざして。
■平坂裕子
奈良市在住のフラワーデザイナー。パフュームフラワー(香り漂う石けん素材が練り込まれた花)にクリスタルジュエリーを添えた新しいデザインのお花を提供している。木やつるを使ったアレンジも得意。電話 090ー6054ー6720
ブログ http://ameblo.jp/crystal-87/
写真提供 平坂裕子
取材・文 如月オフィス 川畑惠子