台湾で国民法官裁判を傍聴してきました
- 惠子 川畑
- 1 日前
- 読了時間: 4分

研究会への参加、市民団体との交流、そして裁判所の視察
2025年2月。陪審裁判を考える会有志による台湾訪問に参加しました。台湾の研究者や市民団体との交流や裁判所の視察、裁判傍聴などを通じて国民法官制度の現状を見聞し、関係者の話を聞く貴重な機会でした。同時に、日本との違いを実感し、あらためて現状を見つめ直すこともできました。雑感を記してみます。
台湾で市民が刑事裁判に参加する国民法官制度
台湾では2023年から、市民が刑事裁判に参加する国民法官制度が始まりました。「裁判官は時代遅れの頭しか持っていない恐竜裁判官」だと批判され、国民からの信頼が低いそうですが、市民の信頼を得、民主的で開かれた司法を実現しようとする関係者の真摯な姿にふれることができました。国民法官制度は日本の裁判員制度に似た仕組みですが、裁判員制度の現状と課題の分析をふまえて、さまざまな工夫がされていました。法廷や評議室のデザイン、しつらえも、裁判所は敷居が高いという気持ちの面でのハードルを下げ、リラックスしてよりしっかりと参加してもらえるように配慮がなされています。メンタルケアのための冊子の配布、事前事後のカウンセラーの面接なども行われています。
情報公開の早さと質
「裁判官の半数は女性」など、そもそも環境や背景が日本と違う面もありますが、何より印象深く心に残ったのは、情報公開
の早さと姿勢です。

台湾で傍聴してわかったこと
法廷のモニターは大型で傍聴者からもよく見えるように表示されていました。音響設備を使っているので、尋問や証言の声もよく聞き取れます。また、法廷には、裁判官はじめ担当する法律専門家の氏名を表示するプレートが掲示されており、誰がみても今日の担当者がわかります。地方裁判所のウェブサイトには裁判官の氏名はもちろん、担当分野などのプロフィールが公開されています。判決が出るとすぐに、地裁のプレスリリースのページで判決文が公開されます。
判決文や裁判官の情報に簡単にふれることができる
法律情報検索システムというサイトからも判決文にアクセスできます。キーワードや裁判官の名前、裁判所の名前などで検索すると、検索ワードに合致する判決文が絞り込まれて一覧表示される仕組みです。日本の裁判所も判決文の一部を公開していますが、2025年4月2日現在で、地裁(下級裁判所)の最近の判例として掲載されているのは97件、最高裁の判例が20件です。検索で表示される判例の数はもっと多いのかもしれませんが、確認することはできませんでした。
一方、台湾の法律情報検索システムで、たとえば、訪問中に名刺交換をしたある裁判官の名前で検索してみると、この裁判官がこれまで勤務した地方裁判所や高等裁判所での判決文5118件がヒットしました。数の差も圧倒的ですが、冊子などのグッズ、ウェブサイトなどすべてのものは、利用者にとって使いやすく、また親しみやすいデザイン。情報を出す際の考え方がまったく違うのです。
デザインやアクセシビリティの良さ
総選挙の際に行われる国民審査の度に、「裁判官が職責にふさわしいか判断する」といっても、マスコミの報じるまとめ情報や、選挙公報に記載されている限られた情報だけでは難しいと感じていましたが、台湾のように、誰にとってもアクセスしやすいところに情報があることは、まず基本だと思います。
意見交換会の記録が縮小されていた・・・
いろいろと、日本との違いに驚き、帰国して、あらためて日本の裁判所のウエブサイトを眺めてみました。裁判員裁判のページには、各地方裁判所が開催している「裁判員経験者の意見交換会」の開催概要が公開されています。以前は、参加した裁判員経験者の声を丁寧に記録したテキストが蓄積されていたのですが、なんと、数年前から1〜2ページのダイジェストだけになっていました。辞退率は高止まりし、「裁判員裁判ってまだやってるの?」という人がいるほど、実感が広がっていない中、意見交換会の記録は裁判員の経験を伝える情報の1つなのに、残念です。
文 川畑惠子
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