「あなたも明日は裁判員!?」
裁判員制度施行10年を1月前に控えた先月、市民の視点で裁判員裁判を考える2冊の本が刊行されました。
「あなたも明日は裁判員!?」(日本評論社)と「あなたが変える裁判員制度—市民からみた司法参加の現在」(裁判員ネットライブラリー)です。裁判員裁判に関心を寄せる多くの方に、ぜひお読みいただきたい内容です。
「あなたも明日は裁判員!?」(日本評論社)
専修大学の飯考行教授、裁判員ラウンジ編著の「あなたも明日は裁判員!?」(日本評論社)は、裁判員制度を知りたいすべての人におすすめしたいガイドブックです。書き手は裁判員経験者をはじめ、学生、裁判官、研究者、弁護士、記者など裁判員ラウンジに参加した人たち。さまざまな立場の人たちが自由に語り合ってきた裁判員ラウンジを紙上で疑似体験するように、多様な声にふれることができる構成です。
おすすめポイントを紹介すると。
(1)平易な文章で読みやすく編集されているので、気軽に読めてよくわかる。
(2)18人の裁判員経験者が執筆している。率直で多様な意見や感想を綴っていて、なかなか聞くことのできない経験者の声を知ることができる。
(3)裁判員制度の概要や、裁判員に選ばれてから何をするのか、終わったらどうなるのかなど、基本的なことがわかる。
(4)「評議で意見を述べやすくするのは裁判官の仕事」、「どうして弁護士は被告人を守る?」など、裁判官や弁護士はじめ、裁判にたずさわる人たちが具体的にその役割を説明している。
(5)裁判員が参加するようになって、裁判や判決はどう変わったのか、変化がわかる。辞退が増えていることなど、制度の課題がわかる。
飯教授は、「裁判員ラウンジは、研究、教育の他に、ボランティア活動の一面がある」と話します。「裁判員の経験を語り合う場が少ない中、気づいた自分が実践しよう」と始まったのが、裁判員ラウンジとのこと。ここに参加した日本評論社の荻原弘和さんは、「市民も専門家も対等に、活発な議論をしている。市民が司法に参加することで、こんなにも多様かつ柔軟で発展的な意見が出てくるものなのかと感銘を受けた。このような対話の場と法教育こそが裁判員裁判を支える司法の土台づくりになる」と確信したことから出版を提案したそうです。
そして、裁判員経験者も交えた編集会議が開催され、市民や専門家ら30人以上が無償で原稿を寄せて本が完成しました。刊行に至るプロセスは、まさにひとつの市民活動といえそうです。この本をきっかけに、対話の輪がさらに広がることを願います。
あなたも明日は裁判員!?
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8019.html
裁判員ラウンジ(3ヵ月に1度開催)
http://www.saibanhou.com/lounge.html
「あなたが変える裁判員制度」(裁判員ネットライブラリー)
裁判員裁判を傍聴する市民モニターの活動を中心に提言を続けてきた裁判員ネットが刊行したのが「あなたが変える裁判員制度—市民からみた司法参加の現在」。裁判員経験者の声を紹介しながら、制度改善への提言をしています。
第1章では、候補者になってから裁判中、任務終了後についての流れを、裁判員経験者の言葉を織り交ぜながら時系列で説明。被告人の生い立ちや罪を犯すことになった事情、事件の背景を深く知り、人に対する見方や社会に対する見方が変わったという裁判員の声を紹介しています。
「法律の知識は必要ないかもしれないが、手続の概略を知っておけばあわてず裁判に集中できるから、傍聴しておけばよかった」という意見を受けて、裁判員候補者名簿掲載通知、呼出状の中に、裁判を傍聴できる旨を案内し、問合せ窓口を各地方裁判所に用意することを提案するなど、これまでの活動をふまえた具体的な提言も記されています。
著者の大城聡弁護士(一般社団法人裁判員ネット代表理事)は、市民参加の意義は「刑事裁判を他人事ではなく、自分たちの問題として受け止め……、一人ひとりが世の中の問題を他人事ではなく、自分たちの問題として受け止めて、市民による市民のための司法を実現すること」とし、「この10年を検証し、さらに次の10年を考えて、法律の専門家だけではなく、市民の視点をどのように制度に反映するのかが問われている」と結んでいます。
裁判員ネット
http://www.saibanin.net
「あなたが変える裁判員制度」
http://saibanin.net/updatearea/news/archives/3125