笑顔の輪を広げたい 〜「きんぽうげ」やまだあゆみさん〜
イベントでは生け込みライブも行う
きんぽうげ」主宰、やまだあゆみさんにインタビューしました。バリバリ稼ぐ人もいれば主婦業中心の人もいて、女性の生き方、働き方はほんとうにさまざまですが、「利益よりも笑顔」というやまださん流の仕事スタイル、素敵です。
大手花店を退職後、小さな個人レッスンから始めたフラワーアレンジ教室「きんぽうげ」の活動は20年を超えた。花のレッスンの他にもメイクレッスンや着物でお出かけなど、さまざまな“笑顔になれるイベント”を企画、これまで延べ数千人が参加している。彼女が紡いできたものは何なのだろう。
自宅を開放しておうちギャラリーを開催
「10のうち4は家族のこと。1は自分のこと。残り5のうち、花とイベントが半々くらい」。きんぽうげに打ち込む気持ちのバランスを、やまださんはそう表現する。
きんぽうげの活動は、フラワーレッスンやフラワーギフトのデザイン制作、お花の活け込みライブのようなイベントや作品展など多彩。デイサービスセンターや老人ホーム、知的障害者施設での花のレッスンにも出かける。
定期的に自宅を開放する「おうちギャラリー」は、10年以上続けている。花のレッスンだけでなく、友人たちの手作り作品の展示販売、カフェのようなお茶や食事の提供、仲間が講師になってワークショップをすることもある。
「作品展の会場を借りるのが難しいので自宅でやろうということもあったけど、もともとお客さまにお茶を出すのが好きだったんです。それに、3000円出してアレンジを習うのはためらっても、ミニレッスンならやってみたい人はけっこういる。気軽にお花を体験してもらえたらいいなあと思って」
そんな小さなウォンツにこたえながら、お花や手芸のワークショップの他にも、味噌造りやネイル、お肌の悩み相談など多彩なイベントを企画している。
友人の焼くおいしいパンを食べてもらいたくてパンを販売する。着付けの講師を招いてみんなで着物でお出かけする。ベースにあるのは、やまださんが応援したい人がいて、他の人にもその楽しさや良さを伝えて輪を広げたいという気持ち。だからその活動は、単なる花屋さん、フラワーアーティストという言葉ではくくれない展開になっている。
そうして人が人を呼ぶようになり、昨年企画したリースの会には180人が参加。リースの会は今年も継続しており、熊本地震への寄付も企画している。「アイテムが多い方がいろんな人が集まる」。やまださんは、何より人のつながり、広がりを大切にしている。
空間に映える装飾として花をデザインするのが好き
年に1、2回はコンテストやイベントなどにも出展する。 「コンテストへの参加は花の技術の追求。ギフトでお客さまのご予算とご希望に沿ったものだけ作っていると、小さなテーブルの上のものばかりになって自ら創作する機会がない。お金はかかりますが、大きなものを自由に作るコンテストやイベントに出すことが勉強になっていると思う」
神戸異人館うろこの家 2013プリザーブドフラワーコンテスト大賞受賞作品
小さく完結した作品づくりよりも空間を意識した装飾として花をデザインするのが好きというやまださん。2013年、「場所にあわせたアレンジ」がテーマの神戸異人館うろこの家プリザーブドフラワーコンテストでは大賞に輝いた。受賞が自信になったのはもちろん、花の講師やデザイナーなど新しい人のつながりが、きんぽうげの活動の裾野を広げた。
しかし、今後もフラワーアーティストとして活躍して稼げるようになりたいのかというと、答はノー。花の技術は高めたいけれど、目標は「利益よりも笑顔」なのだという。
花の魅力を多くの人に知ってほしい
若い頃は、経済的に自立することが目標だった。今は利益は出ていないが、赤字にはならない活動ができている。夫が働いているからできる趣味だという人もいるが、やまださんにとって、きんぽうげの活動は仕事。家族や家事以外の時間のすべてを打ち込んでいるものだ。
パリで開催された企画に花の展示に出かけた時は、自分一人だけ旅行に行くようで家族にうしろめたい気持ちがあった。ところが、娘たちが「でもそれ、仕事やん」と声をかけてくれて驚いたことがある。嬉しかった。
きんぽうげの仕事があるから、社会とつながり、自分を表現できる。利益を重視しなくていいからできる活動もあるし、だからこそ生まれる人のつながりがある。
お花は人にエネルギーを与える。気持ちにゆとりができて、笑顔になる、多くの人が心地よいと思えるもの。自分でお金を出してお花を習えない人にもお花の魅力を伝え、幸せの輪を広げたい。
最近、メイクレッスンにも力を入れている。目の不自由な人が、きちんとメイクをしたら外に出かけようという気持ちが出て表情が変わるという話を聞いてブラインドメイクもやってみたいと考えている。自分自身がメイクに幸せをもらった感覚を障害者やお年寄りにも感じてほしい。メイク法を教えたいわけではない、メイクの力を体験してほしいのだ。メイクもお花と同様に、もしかしたらお花以上に、人を心地よくする大きな力があると思っている。
お花、メイク、着物。やまださんはいつも、「笑顔になれるレッスン」をめざしている。
(取材・文 如月オフィス 川畑惠子 写真提供やまだあゆみ)
やまだあゆみ 略歴
サトウ花店を退職後「きんぽうげ」主宰。教室講師の傍ら、店舗ディスプレイ・ガーデニング・ブライダル装飾もおこなう。和モダンや、自然をモチーフにした個性的なデザインを得意とする。生活に取り入れやすい、身近なアレンジやディスプレイのレッスンが好評。
2008 東京ミッドタウン「La Colina」でディスプレイ 2010 石井竜也、飯田かずみ両氏とのコラボ作品集「Myth」出版 2011 Japan Art Collection in Saint-Petersburg ジャパン・アート・コレクション イン サンクトペテルブルク 出展 2011 パリにて日本の美意識を伝えるエキシビション『WABI-SABI』@Espace Evolution(エスパス・エボルシオン)出展 2011 うろこの家主催プリザーブドフラワーコンテストにて特別賞 2012 プリザーブドフラワー芸術協会主催コンテスト 「草土出版賞」「フロールエバー賞」 2013 JAPAN EXPO2013 「WABISABI」ブースに出展 2013 うろこの家主催プリザーブドフラワーコンテストにて大賞
コンテストへの出展、教室の作品展やイベントへの出展とともに、気軽に参加しやすい自宅のオープンスペースや、学校、幼稚園の保護者向け、老人ホーム、カフェ、雑貨屋さんや花店での定期的なレッスンも行っている。
きんぽうげ 100人のリースの会2016